膀胱癌の体験1(癌告知)

最初の発見

 ある土曜日の夕方のこと、小便のまさに終わらんとしたその時、スポイトで垂らしたような赤い一滴が私の目にとまった。尿は澄んでいてきれいだし、痛みも痒みもない。一滴の赤い印象以外は普段と何の変わりもなかった。

 

とりあえず病院へ

 普段は多少体調が悪くても病院なんかには簡単には行かない私が、その時に限って変に胸騒ぎがして病院の休日診療に駆け込んだ。

 当直のドクターに状況を話すと、一応薬を出すが、月曜日に泌尿器科に来て専門のドクターに診察してもらうようにと言われて帰された。 

 

Tドクターとの出会い

 早速、月曜日の朝、泌尿器科を訪れる。いろいろ問診を受けた後、いろいろ検査しないといけないからと検査スケジュールが決められた。X線(ブレイン)検査からはじめたような記憶だ。説明が親切で熱心であった。

 髭が気になるが私はTドクターが気に入ってしまった。

(追記)Tドクターは後に東京女子医大の教授になられた。

 

インフォームド・コンセント

 最近では、家庭医学書でも「患者さんと医師が十分話し合い、お互いに納得して治療を行う”インフォームド・コンセント”が重要になります。」(NHKきょうの健康より)とあるように重視されてきているようだ。

 私の場合もドクターの説明とその理解、選択の過程は振り返ると理想的なインフォームド・コンセントが行われたと思える。検査の進行と共に、段階を踏んで分かりやすく行われた。

 説明の内容は

(1)必要な検査とその理由

  検尿、尿細胞診、胸部X線、膀胱鏡検査(細胞採取)、静脈性腎盂造影、

  超音波エコー、CTスキャン

(2)検査結果の説明と次の処置案

  腫瘍の悪性度と浸潤程度、治癒の確率

(3)ビデオモニターによる患部の説明

  膀胱鏡検査時に映像を見ながらの説明

(4)手術の方法

  治療の方法とメリット、デメリット

(5)ストーマの位置

(6)手術後の生活設計

などであった。

 説明を受けている時は理解し納得もするが、人間は欲と後悔が多いものらしい。一般的な確率ではドクターの説明の通りかもしれないが、自分の確率は幸せな低い確率に入るのではないか?と贅沢な思いに浸るのは私だけだろうか?

 命拾いだけが望みのはずが、これが達せられると欲がでるからインフォームド・コンセントは難しいと思う。